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2013.05.23

外れ馬券は経費になるのか? 注目の判決

uma_icon_hoka儲け1億4000万円なのに、5億円脱税で起訴されたという事件。判決が出て、「外れ馬券は経費」と言葉足らずな報道もされているが、ことはそう簡単なものではない。



昨年11/20のコラム「儲け1億4000万円なのに、5億円脱税で起訴?」で書いたので訴訟そのものについては省略するが、5/23、大阪地裁で判決が出た。

元会社員に懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)と、所得税法違反については有罪。
しかし、課税額は約5億7000万円から約5200万円に減額され、外れ馬券を必要経費と認める判決となった。

しかし、実際はニュースなどが報じるような簡単な話ではない。

今回のケースで元会社員はかなり特殊と言っていい馬券の買い方をしていた。当たり馬券の払戻金を次のレースに充て、多いときで1日1000通り以上の馬券を買い続けて、5年間で約35億円分を購入、約1億5500万円の利益を得た、というものだ。

注目となるのは判決の中での裁判長の言葉だ。

西田裁判長は「一般的には競馬は趣味、娯楽であり、馬券購入費は楽しみ賃で経費に含まれない」と位置付けた。その上で、元会社員の馬券購入は「継続的、反復的でほぼ全レースにわたっており、利益を得るための資産運用としてみることができる」と述べ、元会社員の利益は雑所得に当たるとした。
検察側は「利益は一時所得に当たり、経費にできるのは当たり馬券の購入費だけ」と主張していた。
(時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date1&k=2013052300234

「今回のケースは娯楽ではなく資産運用に当たる」と認めたにすぎない。つまり、一般的な外れ馬券すべてが必要経費となるという判決ではない。趣味、娯楽として馬券を買っている限り、経費には含まれないと明言されており、これでは画期的でもなんでもなく、現実にそぐわない判決をしたということに過ぎない。
もちろん、当たり馬券購入額を差し引いた金額が年間で90万円以上だと申告義務が生じる、という前提は何も変わっていないし、趣味、娯楽で買った外れ馬券は経費に認められることはないだろう。

喜んでいる競馬ファンも多いかと思うが、これは決して喜ぶべき判決ではない。

国税庁内では冷静な受け止めが目立った。ある幹部は「こちらの主張が認められなかったのは残念だが、想定の範囲内。判決を見てみないとはっきりしないが、馬券の購入方法にはいろいろなケースがあり、今回はかなりのレアケースとして『雑所得』と判断しているはずだ。通常の馬券の払戻金が『一時所得』というこれまでの解釈に影響はないだろう」と強調した。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130523-OYT1T00793.htm

この台詞が本当なのかどうかを知るすべは無いが、もし本当に「想定内にも関わらず起訴した」ということなら、見せしめ以外の何物でもなく、税金を取るためなら何をしても良いという国税庁の姿勢は非難されることになるだろう。国税庁はおそらく控訴するのだろうが、現実にそぐわない規則を遂行するだけの、前時代的な組織だ。

実際、「自分も課税されるのか」とJRAに疑問や苦情が殺到している(産経新聞 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/656720/)そうで、JRAは課税の可能性を表記するだけでなく、現実的な課税方法を提案していく必要があるだろう。

俺の主張は以前のコラムでもした通りだが、もう一度。

馬券を買った段階ですでに購入額の10%が国庫に納付されている。税金とは言っていないが税金と同じだ。その上さらに当選金からも税金を取るのは明らかにおかしい。制度の瑕疵だ。
当選金への税金を無くすか、当選金から一律に天引きするなりにして、公平にすべき。もちろん、後者の場合は国庫納付金制度は無くして、控除率を15%に引き下げるべきなのは言うまでもない。